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課題別基礎情報
セクター

経済インフラ
国際協力銀行開発セクター部
庄司 仁

1. 経済インフラと社会インフラ

 経済活動を支える一般的な資本設備や施設を総称してインフラストラクチャー(略してインフラ)と呼ぶ。インフラは社会資本と同義である。インフラのうち、道路、橋梁、港湾、鉄道、空港、発電所、送配電設備、ガスパイプライン、電気通信施設、灌漑施設等、より直接的に一国の投資・生産・サービス提供を支えるために不可欠な施設を「経済インフラ」と呼んでいる。一方、上下水道、学校、医療施設等、人々の日常の生活に不可欠な設備・施設は「社会インフラ」と呼ばれており、経済インフラと区別される。経済・社会インフラ共、公共財としての性格ないしは自然独占として成立する経済財という性格を持つことから、従来は国の公共事業の対象として地方政府も含む国家予算により建設・運営されてきたが、近年では自然独占が成立する財の供給においても競争原理が導入され、民間部門による計画・建設・維持管理が行なわれたり、効率的なサービスの提供が意図されるようになった。経済・社会インフラがいずれも物的資産である一方で、市場メカニズムに基づいた経済活動を支える所有権や商法等の法律体系や、日常生活に必要な公益サービス提供のための制度とそれらの制度を運用する弁護士・裁判官、教員や医師等の人的資源などを併せて「制度インフラ」と呼ぶ場合もある。開発援助の中で話題となるインフラは、歴史的には以下(2)に述べるように「経済インフラ」が中心であったが、70年代以降貧困層への援助がより注目されるようになって以降、「社会インフラ」も重視されるようになり、最近では政策やそれを実施する「制度インフラ」に対する関心も高まってきている。

2. 歴史的背景

(1) インフラ・プロジェクトへの支援
 第二次世界大戦後の開発援助は、戦争で疲弊した欧州の社会資本整備に対する世界銀行の融資が原型として一般に広く認識され、インフラ・プロジェクトに対する融資が主流となった。60年代には経済インフラへの投資によって達成される経済成長から得られるトリクル・ダウン効果1を期待したインフラ整備、とりわけ大規模インフラへの援助が多く行なわれた。70年代になると、期待されたトリクル・ダウン効果が得られなかったことに対する反省から、BHNの充足を重視する考え方が取り入れられたが、引き続きインフラ整備が重要との認識は維持された。また、インフラ投資のサステナビリティー確保の観点から、インフラ投資と併せて運営・維持管理を十分に行なうための体制造りに対する支援も実施された。

(2) 民活インフラへの期待
 第2次オイルショック以降の国際経済の変化により、債務問題が表面化した結果、80年代以降アフリカを中心とした多くの開発途上国において、公共投資の見直しを行い、財政収支を均衡させる構造調整計画が実施された。同計画は政府から多額の補助金を受け取りつつも非効率な経営を行っている電力、通信、港湾部門の政府現業部門、公社・公団を民営化することによって、財政赤字の削減を図った。開発途上国の民営化には、90年代に英米を中心として導入された公共部門の民営化が背景にあり、公的部門によって提供されてきたインフラ・サービスの質が悪く、信頼性に欠け、価格が高くかつ価格インセンティブを伴わないという状況を、市場メカニズムを導入することにより改善しようとするものであった。このような公営企業の民営化や、同じく構造調整計画の中で実施された規制緩和によって、投資環境が整備されたことにより、インフラへの新規民間投資の期待が高まったことを「民活インフラ」(BOT2をはじめとするインフラ事業に対する各種の民間投資とその運営方法)と呼んでいるが、「民活インフラ」は90年代央に認識されていた膨大なインフラ整備需要に対する切り札として期待された。この結果、欧米を中心としたドナーは、インフラ事業に対する融資は全て民間に任せ、ODAはより貧困削減効果が高いとされる社会開発案件に対して供与すべきであるという考えを主張するに到り、インフラ整備に対してODAを供与することを歓迎しない風潮が主流となった。

(3) 公共投資によるインフラ整備の必要性の再認識
 1997年の東南アジア金融危機以降、万能薬のようにもてはやされた民活インフラの投資額が激減し、一方で民間投資が行なわれるインフラ・セクターが電気通信、発電等の限られたセクターに集中したことから、引き続き存在する膨大なインフラ整備需要に対して、民活インフラのみでは対処出来ないとの判断が序々に形成されて行った。2002年の8月に開催された国連開発資金会議(モンテレー会議)3 のコンセンサス(モンテレー・コンセンサス)では、MDGsが目指す貧困削減には経済成長が必要であり、そのためには「民活インフラ」への支援を含むインフラ開発が必要との認識がなされた。2000年以降世銀・IMFのイニシアチブによって作成されるようになったPRSPの中でも、貧困削減を達成するためには経済成長が必要であることが序々に認識されるようになり、その中でインフラ整備の重要性も再認識されはじめた。2003年には、世銀のインド・中国理事の発言を契機に、世銀内部でインフラへの融資を重視する動きが表面化し、これが「インフラ・アクション・プラン」として結実した。OECD・DAC(経済開発協力機構・開発援助委員会)でも上記と同様の認識のもと、2003年の下部機構見直しの中で、従来から存在していた「貧困削減ネットワーク」で経済成長と貧困削減の関係を議論することとなり、その議論のテーマの一つとしてインフラが選択されている。

3. インフラ整備の課題

(1) 不足する投資、維持管理財源
 インフラに対する開発援助で最大の課題は、絶対的に不足している投資資金をどう捻出するか、という点である。最近の世銀の試算によれば、2005年から2010年の開発途上国全体のインフラ投資・維持管理費用は最低でも年間4,650億ドルと見積もられている(World Bank; Implementing the World Bank Group Infrastructure Action Plan)。民間セクターのインフラに対する投資がかつて期待された程実現しない中で、公的部門によるインフラ投資の必要性が再認識されつつあり、先進国のODAの増額と同時に、開発途上国の国内貯蓄の動員をどう図るかが大きな課題となっている。特に運営・維持管理予算に関しては、開発途上国政府の行政機関等にその必要性の認識が無い場合や、予算手当てがなされる仕組みは存在するものの、十分機能していない場合などがあり、一般的に財源確保が不十分である。

(2)社会・環境等への配慮
 インフラ・プロジェクトは、非自発的な住民移転を発生させたり、環境破壊に繋がるとの指摘がなされ、批判の対象となってきた。一般に開発途上国では、開発計画の策定とそれに基づくプロジェクトの選定に際して中央集権的意思決定がなされてきたため、プロジェクト実施地域の住民や当該地域を所管する地方自治政府と中央政府に所属する事業実施機関の間で十分な協議が行なわれていない場合が多く見られた。このような中央政府の主導による開発計画、プロジェクトの実施に際して、移転住民に対する配慮が不十分なまま事業実施が急がれ、強制的な手段による立ち退きが行なわれることもあった。これら弱者の立場に置かれる人々の多くが貧困層であったことから、NGOを中心として批判がなされ、全てのインフラ・プロジェクトが貧困層を迫害するかのような固定概念を植え付ける結果となった。このような批判に対して援助機関側は援助を供与する際のガイドラインを策定し、Environmental Impact Assessment (EIA)の承認や、住民移転行動計画(Resettlement Action Plan: RAP)の策定を開発途上国政府に求め、援助供与の際の条件とすることが一般的に行なわれた。この結果、今日では国内の事業計画策定の段階でこれらの手続きを義務化した開発途上国が増加している。また、援助国側のイニシアチブにより、中央政府が実施するインフラ事業の計画策定過程に住民が参加し、彼らのニーズを反映したプロジェクト・デザインを行なうことも行なわれるようになっている。
近年、開発援助の考え方が受益者である人間、なかでも貧困層を中心とするようになってきたことに伴い、開発がもたらす社会的な影響を、人々の生活や文化、コミュニティー、政治システム、環境、健康状態、財産や安全や将来に対する不安といった面から評価しようとする社会インパクト評価(Social Impact Assessment: SIA)4といった考え方もインフラ整備に際して取り入れられるようになってきている。

(3) 中央政府・実施機関の実施能力不足
 先に述べたモンテレー・コンセンサスでも指摘されているが、経済成長を達成するためには適切な政策の実施とそれを可能とする行政組織の整備・能力向上が必要であるとの認識が近年高まっている。既に述べた様にインフラ整備では多くの場合中央集権的な意思決定方式がとられることから、セクター別の所管官庁による縦割り行政や、プロジェクト実施部局(Project Management Unit: PMU)が新規事業を拡大する弊害として、同じようなインフラ設備が近隣に同時に建設されたり、ネットワークとして整備されるべきものが、ネットワーク性に十分な配慮を行なうことなく建設されてしまうなどの問題が生じている。また、新規投資と運営・維持管理の連関性が考慮されないといった問題も生じている。これらの問題を避けるために、事業実施機関や政府内部での調整が必要不可欠との認識が従来からなされ、公共支出管理や運営・維持管理を司る行政組織の能力向上や新たな制度の創設に多くの支援がなされてきた。こういった努力がなされているにもかかわらず、これらの問題解決について十分な成果が上がっているとは言い難い。インフラ整備に当たっては、単に単独の物的資産を整備するという視点だけでなく、開発事業の相互連関性に配慮する一方で、各事業を支える政策や制度と政策・制度を実施する行政官の能力向上まで含めた包括的な取り組みが求められている。
 また先進諸国の開発援助額が減少し、適切な開発政策の実施と援助効果の関係が議論されるようになり、援助効果の発現を妨げる要因として政府の政策実施能力の低さが論じられる中で、その原因の一つとして、公的部門にはびこる汚職が問題視されるようになった。汚職は援助の効果を低下させるだけでなく、貧困層にとって重要な公的サービスの提供についてもネガティブな影響を与え、更に貧困削減にとって重要な経済成長の妨げともなっていると認識され、開発援助の供与に際しては公的部門の汚職追放も重視されるようになってきている5。インフラ整備においては公的部門の果たす役割が依然として大きいことから、公的部門の政策立案・実施能力を向上させていく中で、汚職を可能とするメカニズムを解消していくことが求められている。

(4) 地方分権化の問題
  近年では行政の分権化が叫ばれ、中央政府から地方政府への権限の委譲が行なわれているが、これに伴ってインフラ整備の計画・実施・運営維持管理も地方政府に移管されつつある。これまで中央集権的な行政システムの中でインフラ整備に関与してこなかった地方政府には、中央政府が培ってきた事業計画・実施のノウハウや能力のある行政官が不足しており、地方政府の行政能力向上という新たな課題も生じている。加えて、行政権限と一体として委譲されるべき財源の手当てが伴わず、権限のみが委譲されて現状は改善しないという事態も生じている。住民のニーズをより多く汲み上げるという観点から、インフラ整備を分権化のもとで実施することは意義深いものであるが、一方で、能力・財源に関する問題をどう克服していくか、が大きな課題となっている。

4. 最近の議論・論点

(1) インフラ・サービス提供の視点
 貧困層が抱える問題の内、最も大きなものは公共サービスや就業機会等への「アクセスの欠如」である。このアクセス問題を解決するためには、単にインフラを整備するだけでなく、インフラを通じて提供されるサービスが重要との認識がなされ、インフラに関する論点は物理的な施設の整備から、その施設を通じて提供されるサービスの質に移ってきている。2004年の世界開発報告で世界銀行は、インフラ事業のサステナビリティーや効率性の確保に関する過去の経験から、受益者、行政機関、インフラ・サービスの提供者の三者の関係に注目し、信頼性が高く良質のインフラ・サービスを提供するための方策をこの三者の関係から論じている。受益者については、これまでのインフラ・サービスの提供において貧困層のニーズが反映されることが無かったことから、貧困層を事業計画の策定過程へ参加させる方策や、提供されるサービスの質を監視するための方策を構築することにより、貧困層のニーズが反映されるインフラ・サービスのメカニズムを構築する必要性を説いている。行政機関については、適切な政策・効果的なサービス・デリバリーが確保されるためインセンティブ・システムの構築、政策担当者とサービス・プロバイダーの分離、すなわちサービス提供の外注化が提唱され、サービス・プロバイダーについては、モティベーションのあるプロバイダーの発掘とインセンティブの供与を前提として、民間セクターやNGOの活用や、事業の運営や維持管理の権利(コンセッション)の供与によって、インフラ・サービスの質と信頼性を向上させることが提案されている。

(2) 基幹インフラと末端インフラの調和のとれた整備
 MDGsを達成させるためには、教育・保健・医療サービスを提供する必要があり、これらの社会サービスの提供には道路や上下水道、電力等のインフラ・サービスが不可欠との認識は広く受け入れられているが、インフラ整備の議論の中心は引き続き農道や農村電化といった人々の生活と密接に関連するインフラ設備に置かれている。これに対し、英国DFIDが作成した政策文書Making Connectionsでは、国民経済レベルに対応する基幹インフラと人々の生活に密着した地域的に限定される地方インフラの双方をバランスよく整備することの必要性を説いている。

(3) 国境を越えたインフラ整備
 開発途上国の中には、独立時に国境が人工的に設定された結果、伝統的な経済のつながりが無視されている国々や、一国の経済規模が小さく、周辺国との経済交流を深めることにより、規模の経済の恩恵を受けなければ、一国として経済的に独立することが難しいといった国が存在する。これまで一国の経済開発は自国の経済的独立を中心に考えられてきたために、周辺諸国も含めた地域で規模の経済を実現する、ないしは共同市場を創設するといった発想が十分見られなかった。近年自由貿易協定の締結や経済のグローバル化の進展を契機として、国境を越えた地域の経済的つながりを視野に入れた経済開発の動きが見られるようになり、その観点から単に一国に留まらず周辺諸国と接続するインフラの整備が計画されるようになってきた。アジアではインドシナ半島でタイとベトナムを結ぶ東西回廊の整備や、ラオス・タイ間の送電線建設といったものが見られるほか、アフリカ諸国が策定したアフリカ開発の新しいイニシアチブであるNEPAD(New Partnership for Africa's Development)のインフラ短期行動計画でも国境を越えた地域インフラの整備の重要性が指摘されている。

5. 主要ドナーの政策スタンス

(1) 世銀
 世銀は2003年2月に中国・インド理事の発言を期に、社会セクターに重点を置いていた融資の方針を転換し、インフラに対する融資を増加させるための「インフラ・アクション・プラン」を策定、インフラを融資の柱とすることを明確なものとした。同プランでは、MDGsを達成するためには、インフラ・サービスの有無、効率と信頼性が経済成長と投資環境に大きな影響をもち、強いては社会的サービスの提供を通じた貧困層の生活改善に大きな役割を果たすとの認識を基礎として、インフラ投資と規制緩和・制度能力開発をバランスよく行なうことによって、インフラ投資の効果が十分サステナブルとなるための政策環境と政策実施能力を実現し、インフラ・サービスの信頼性と効率性を高めることを意図している。その戦略の中で世銀は民間部門のインフラ事業への参画を引き続き求め、そのためのセクター改革に対するアドヴァイスを継続して行なうとしており、対象とするセクターとして、上下水道を重視している。

(2) アジア開発銀行(Asian Development Bank: ADB)
 ADBは2001年に策定された2015年までの戦略文書(Moving the Poverty Reduction Agenda Forward in Asia and the Pacific: The long term strategic framework of the Asian Development Bank 2001-2015)の中で、持続可能な経済成長に対する支援を戦略的な介入領域の第1に挙げ、その中で伝統的な公的セクターによるインフラ整備が今後も必要であるとの認識のもと、公的部門に対する支援を継続することを明らかにしている。また同時に、公的部門のインフラ整備に対して民間部門は補完的な役割を果たすべきであるとの認識を示している。支援に際しては、インフラ整備によって影響を受ける全ての人々の計画段階からの関与に配慮すること、地方開発、大都市問題への取り組み、ICTの活用等に配慮している。

(3) その他の主要ドナー
 米州開発銀行(Inter-American Development Bank: IDB)は2003年に策定された新戦略の中で、インフラ整備に関しては規制枠組みの整備、民間セクターと連携したインフラ投資の実施、国営企業の改革支援を行なうとしており、民間セクターの役割を重視した戦略を打ち出している。
 EUは2000年に締結されたロメ協定の中で、経済活動の発展を支えることを援助戦略の第1に挙げており、その中で運輸・エネルギー部門の開発や海運・航空・ICT部門のサービス向上に対する支援を重視している。
 英国は2002年に政策文書"Making Connection"を発表し、インフラ・サービスの提供が貧困削減にとって重要であるとの認識のもと、単なるインフラ整備からインフラ・サービスを提供する仕組みである制度へ支援をシフトすること、国家レベルの基幹インフラと地方レベルのインフラ双方の重要性を説いている。

6. 日本の諸機関の動向

 我が国の経済援助では、従来からインフラに対する支援が大きな比重を占めており、1992年に策定されたODA大綱はこの方針を初めて明文化した。1999年に制定された外務省の政府開発援助に関する中期政策や2002年の新ODA大綱でも持続的成長への支援として経済・社会インフラへの支援が重点課題に含まれている。インフラ整備は多額の初期投資を必要とすることから、我が国の政府開発援助の中では従来から円借款が活用されてきている。円借款の実施機関であるJBICの海外経済協力業務実施方針の重点分野にも「経済成長に向けた基盤整備」としてインフラ整備への支援が重視されている。他方、後発開発途上国(LLDC)に対しては、無償援助でも橋梁や道路建設等の経済インフラ整備が行なわれている一方、開発調査においても、インフラ事業を対象とするものが多い。
 80年代末頃から、ODAで供与された物的資産が十分に活用されていない、ないしは大規模インフラ工事のために住民移転が必要となっているといった観察事実等をもって、我が国のODAは「インフラ等の箱物の供与」が中心であるとの批判がなされるようになった。我が国の開発援助では、開発途上国の自助努力を支援するとの政策を取ってきたことから、開発事業を企画・計画する際に、相手国の技術水準が十分でない設備投資の対象となる物的資産のデザインや技術的解決方法の提示、コスト積算等に多くの努力が注がれ、完成後の設備を運営・維持管理するための制度やメカニズムについては、被援助国の自助努力によって維持されるべきものと考えられてきた。この結果、相手国の自助努力の領域で問題が生じたことは否定出来ない。開発援助によって実施される事業の持続可能性が認識されるようになった80年代、円借款事業では1987年に援助効果促進業務(Special Assistance for Project Sustainability, SAPS)が導入され、対象事業の援助効果発現の妨げとなる要因(これらの要因は往々にして施設の運営・維持管理に関する制度的な要因であることが多く見られた)を分析し、それに対する改善策を先方政府に勧告したり、国際機関や他国の援助機関との協調により、設備投資と運営維持管理のための制度造りを分担しつつ事業を進めるといった手法がとられるようになった。また、1992年からは案件実施支援業務(Special Assistance for Project Implementation, SAPI)を導入し、案件実施段階で生じた制度的な問題点に対する解決策の提示も行なわれるようになった。2003年には過去の円借款対象のインフラ案件の評価をセクター横断的に取りまとめ、各セクターが共通して抱える問題点を洗い出している。このように円借款では、従来からインフラ投資が持続的に効果を発現するためには制度的な面での強化が必要であるとの認識を持ち、対象事業の中で事業実施機関の能力強化のみならず、制度改善のための調査・提言を行い、その実施のための支援まで行なうようになってきている。JICAにおいても近年、インフラ整備に関する開発調査に住民組織との合意形成を図るスコープを含むもの等、制度的な面を含めた事業形成をする事例が見られるようになってきている。
 2003年には、世銀のインフラ・アクション・プランの一貫として、日本政府の支援を受け、JBIC、世銀、ADBの3機関合同による「東アジアのインフラ整備:その前進に向けて」と題する調査が開始された。この調査は、「インフラの効率的な整備が貧困削減に果たす大きな役割に焦点を当て」るもので、「東アジアのインフラ整備に影響を与えている新しいトレンド(急速な都市化と地方分権の進展、行政・公共サービスにおける規制の欠如や汚職問題に起因する民間投資の冷え込み、国際競争力の変化、地域統合を促進するために必要な国内外の物流インフラの発展、市場志向型改革における公共セクターの役割、制度・能力構築)」6 について分析することとなっている。また、既に述べた通り、OECD・DACの「貧困削減ネットワーク」でもインフラ整備と経済成長、貧困削減の関係を議論することとなり、我が国がインフラ整備と貧困削減の関係を議論するタスク・チームのリードを引き受けている。

7. 主要文献と関連リンク

  1. 世界銀行:世界開発報告 1994年版 「開発とインフラストラクチュア」
    World Bank: World Development Report 2004, "Making Services Work foe Poor People"
    World Bank: Private Participation in Infrastructure: Trends in Developing Countries in 1990-2001

  2. 国際協力銀行:開発金融研究所所報 2000年11月増刊号 「21世紀の開発途上国の社会資本を創る」
    Department for International Development: "Making Connections; infrastructure for poverty reduction"

  3. 世界銀行 インフラホームページ
    http://www.worldbank.org/infrastructure/

  4. 世界銀行PPI Project Database
    http://rru.worldbank.org/ppi/

  5. JBICホームページ
    http://www.jbic.go.jp

  6. NEPAD Action Plans
    http://www.touchtech.biz/nepad/files/actionplans.html

1 経済成長が達成されればその成果が経済のメカニズムを通じて自然と再配分され、国全体の経済発展が進展するという考え方。
2 Build Operate and Transfer scheme: 発電所や道路、上水供給等の公益事業のための施設に対する投資を民間企業が中央政府等の公的部門から受注し、一定期間運営した後に公共部門に所有権を移転するファイナンスの方式。
3 http://www.un.org/esa/ffd/
4 社会インパクト評価については、http://www.iaia.org/Members/Publications/Guidelines_Principles/SP2.pdf
5 汚職撲滅に関してはhttp://www1.worldbank.org/publicsector/anticorrupt/index.cfm
6 JBICプレスリリースhttp://www.jbic.go.jp/autocontents/japanese/news/2004/000006/index.htmより引用


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