DAKIS課題別基礎情報>セクター:教育・識字教育と開発
DAKIS
各種報告書
Journal Express
開発援助の新しい潮流:文献紹介
最新開発援助動向レポート
課題別基礎情報
セクター:
教育・女子教育
保健・日本のNGOの活動
環境・水
農村開発
Research and Extension
平和構築
ジェンダー
産業政策
経済インフラ
貿易
Social Capital
ディスカッション・ペーパー
「国際開発援助動向研究会」会合の議事録
有益関連リンク集
ORCS(ODA調査研究協力システム)
"DAKIS"内の情報を検索します。
課題別基礎情報
セクター

識字教育と開発
国際基督教大学COE客員教授 千葉杲弘

1.課題「識字と開発」の定義

 教育と開発の関係については1960年代から多くの研究や実験が行われ、その関係についての解明は進んでいるが、常識的に相関関係が存在すると考えられる識字の普及と社会経済発展の関係については、厳密に定義することは難しい。まず、識字についてみると、国際的に共通な定義は存在せず、ユネスコは各国が独自に規定する定義をそのまま受け入れている。しかし、世界の統計の標準化をはかるために、ユネスコはこれまで二度ガイドラインを提示した。まず初期の段階では、識字は一般に「読み書き算数」と言う3Rと同意義にとらえられ、1958年にユネスコは「各人の日常生活についての短い簡単な文章を読んだり、書いたりできない人」を非識字者と規定した。当時多くの国では、自分と親の名前が書けるだけで識字者と認定されていた。これを単純識字という。

 1960年代から教育と開発の関係が重視されるようになり、識字と開発の関係にも関心が寄せられるようになり、識字の概念は単純識字から機能的識字に移行した。その状況を反映し、ユネスコは1978年に新しいガイドラインを発表した。すなわち「各人の属する集団や地域が効果的に機能するために行われる識字能力を必要とする諸活動に参加できない人、また各人および地域の発展をはかるために読み書き算数の技能を継続的に使えない人」を非識字者とした。

 さらにユネスコの識字統計は、15歳以上の人口を対象とした成人識字統計で、学校に通う機会のない14歳以下の非識字者数は含まれていない。

 次に「識字教育」という用語も、機能的識字の概念の導入とともに複雑になり、教育活動の内容や、各国の事情によりいろいろの用語が用いられている。 「識字教育・ポスト・リテラシー・継続教育」と識字教育を学習の継続性の中でとらえる場合もあり、また学校教育と対比させて、ノン・フォーマル教育と呼ぶ場合もある。しかし、継続教育もノン・フォーマル教育も、識字教育を含むものの厳密には同義語ではない。また、フォーマル・ノン・フォーマル・インフォーマル教育を総括して、基礎教育(Basic educationまたは、Minimum essential learning needs)と呼ぶ場合もある。識字教育は教養や文化に関連する場合も多く、広い意味では開発に関連しているものの、厳密には識字の全領域を開発の概念の範疇に入れることは難しい。

 本稿では、論点が拡散しないように、「識字と開発」という比較的限定的な問題領域に焦点を当てることにする。

2.歴史的考察

 文字の発明と文明の発達は密接に関係してきた。文字を持たなかった文化や国は歴史の中に消滅し、主要な文明は文字を媒介として現代まで継承されていることが多い。多くの古典は現代においても我々に真理を物語っている。しかし、優れた哲学者、詩人、作家、上流階級知識人の陰には無数の非識字者が存在したと思われるが、古代文明は、その社会を構成した文字の読めなかった一般庶民や農民については何も語っていない。中世のヨーロッパでは、識字者数はさらに低下したが、ヨーロッパの識字は宗教改革をきっかけに普及したといわれている。宗教改革はラテン語にかわって、自分の言葉で神に祈ることを可能にし、聖書はいろいろの国の言葉に訳されるようになった。各自の言葉で聖書を読み、神に祈りを捧げることは当時の信仰深い信者にとって文字を学ぶ大きな動機となった。日本では、学問は僧侶や武士階級に限られていたが、徳川時代以前から商家や農家は自分達で寺子屋を始めて、庶民の子弟に識字と行儀作法という基礎教育を与えた。

 近代国家の成立過程で、西欧は近代的教育制度を整備し、19世紀の後半にはアメリカやヨーロッパは識字社会に移行するようになった。しかし、学校教育の普及とは別に識字の振興をはかったのはソ連であった。1917年に社会主義革命に成功したレーニンは、1919年に非識字撲滅の政令に署名した。プロレタリア政権の主体である労働者や農民が非識字者では社会主義国家を運営することはできないからであった。しかしソ連が識字社会を成就したのは第2次世界大戦後のことである。爾来、社会主義や共産主義政権は識字を国家の最重要政策として取り上げるようになった。中国、ベトナム、ビルマ(現ミヤンマー)、キューバ、ニカラグア、タンザニアなどがそのよい例である。これは政治的目的からの措置であり、とくに開発を考慮したものではなかった。

 識字が国際社会の重要課題として取り上げられるようになったのは第2次世界大戦の終了後で、ユネスコの果たした役割が大きい。1946年に創設されたユネスコは、恒久平和の樹立を目指して最初に取り上げたのが、国際理解教育とFundamental education1 であった。Fundamental educationは、平和の促進のために、地域社会を無知から解放しようとするもので、今でいう村おこし運動に近い概念であった。そのために識字教育を含め、学校教育、農村教育、公民教育、保健、衛生、職業教育と多角的なアプローチを用いた開発戦略がとられた。多くの国で識字教育が実践された。このような多角的アプローチから、識字教育が単独に重点課題として取り上げられたのは、多くのアフリカ諸国が独立して国連に加盟した1960年であった。

開発の10年と識字
 1960年代の10年間は国連の「開発の10年」と規定され(国連総会決議1710(XVI)号)、Fundamental education にかわって初等教育と識字教育が社会経済発展の要因であると認識されるようになった。1961年の国連総会はユネスコに対して世界識字キャンペーンを提案するように要請した。当時世界には15歳から50歳までの人口の5億人が非識字者であると推定されていた。ユネスコはその3分の2にあたる3億3000万の非識字者を10年間に識字者にする計画を提案したが、あまりにも多額の費用を要するので、国連総会は資金的支援を断念した。

機能的識字の概念の擡頭
  ユネスコは再起策を検討したが、水面下では東欧の主張する人権としての識字のアプローチに対して西欧諸国の開発を中心とする機能的識字の間の抗争が行われていた。1960年代の中期になると機能的識字の概念が優位を占めるようになり、世界で初めて1965年に「識字に関する世界教育大臣会議」がイランのテヘランで開催された。従って識字の社会経済開発に対する役割が公式見解として取り上げられたのは1965年前後のことであった。

 しかし、識字が実際に開発に貢献するか否かについては、常識的推論は可能であったが、具体的な根拠があった訳ではない。識字が実際開発に貢献することを立証するために、ユネスコは国連開発計画(UNDP)の協力の下に、世界識字実験計画 (EWLP: Experimental World Literacy Program)を世界の16カ国 2 の参加のもとに1960年代の後半から1970年にかけて実施した。これは勤労志向識字計画ともいわれ、アルジェリアの例では、自治農業地域、産業地域、工業農業混合地域の3地域で勤労志向型の識字教育とともに、新革命国家のイデオロギー教育を行い生産性の向上に寄与したか否かを検証しようと試みた。インドでは識字とグリーン・レボリューションの成果との関係の検証を行った。当時のタンザニアではニエレレ大統領の思想を背景に自助努力とアフリカ的社会主義、重農主義を統合したウジャマー(UJAMAA)政策がとられ、アフリカ的社会主義共同体の形成を目的とした集村計画、新しい村作りが進められていた。これは知識、技能習得のみの識字ではなく、新しい国家建設の精神やウジャマー精神の体得をも目的とし、態度や行動様式の変化をも求めた。

 これは前代未聞の壮大な実験計画であったが、識字という要素を単独に取り出して、その開発に対する貢献度を測定することはできなかった。例えば、農業の生産性の向上にしても、気候的条件、経営の問題、種子、肥料、価格変動等の複雑な要因によるもので、どこまでが識字によるものかについて結論は出せなかった。しかし明白な結論は、識字は国連のような部外者が主体性をとるのではなく、国の主体性、とくに国の政治的意志が重要であるということであった3

経済開発から人間開発への移行
  この実験計画の挫折をふまえ、また、1975年のペルセポリスの国際識字シンポジュームを契機として、開発を中心とした識字の戦略から、人間の解放と全人的発展、エムパワーメントを中心とする識字開発戦略が主流となったが、これには人間の意識化と識字教育を組合せたパウロ・フレイレの思想と実践が大きな影響を与えた。今日、識字教育の教育学としてパウロ・フレイレの理論は高く評価されている。彼は1960年代の初期にブラジルの東北地方で大衆文化運動を実践していたが、その中で行った識字教育は多くの人々に評価された。軍事クーデターで国外に亡命したが、亡命先でも農業改革に識字教育を取り入れるなど社会的弱者の立場に立った識字教育を実践した。

 識字とは単に読み書きを習うのではなく、なぜ自分は非識字者であるかという社会的状況や問題を理解し、識字活動を通して抑圧されて来た非識字者の意識化をはかった。すなわち社会的弱者のエンパワーメントの概念である。

識字と万人のための教育:
 1980年代は「失われた10年」といわれ、また識字教育の多くの挫折から識字と開発の関係の解明についても主立った進展は見られなかった。しかし、ユネスコは第2次中期計画(1984‐89)において教育開発戦略全体を見直し、初等教育と識字教育をコインの表裏として一体化する[万人のための教育](Education for All: EFA)の戦略を採択した。さらに国連総会は1990年を国際識字年に指定した。同年、ユネスコ、ユニセフ、国連開発計画、世界銀行は合同でタイ国のジョムティアンでEFA世界会議を開催し、EFAを教育だけでなく全開発戦略の中心に位置づけた。また、国連開発計画も1990年より開発概念を、これまでのGNP中心の経済的開発戦略から人間開発を中心とする概念に転換し、人間開発指標を採択した。かくして、1990年を契機として識字教育はEFAの開発戦略の一部として復権した。すなわち,フォーマル、ノン・フォーマル、インフォーマル教育を通してMinimum Essential Learning Needsを充足するといEFA戦略の中に明確に位置づけられた。爾後、識字活動はノン・フォーマル教育の基幹として実践されるようになった。

 国際社会はさらに貧困削減を目標とした開発戦略に重点を置くようになり、2000年の世界教育フォーラム(於:ダカール)の採択した行動枠組み、ミレニアム開発目標、国連識字の10年(2003‐2012)、持続可能な開発のための教育の10年(2005‐2014)といった主要な開発戦略の中に識字教育の目標を設定し、関連する開発計画や行動計画を採択している。すなわち、「2015年までに成人(とくに女性)の識字レベルを50パーセント向上し、全成人の基礎教育と継続教育への公正な参加を実現する」ことが現在の目標である。

 また、ユネスコは、2006年のEFAグローバルモニタリングレポートで識字を特集し、世界の非識字人口の85%が集中する34ヶ国を対象とした「エンパワメントのための識字イニシアティブ(Literacy Initiative for Empowerment)」を立ち上げた。

3.理論的考察および最近の論点

 これまでの識字教育のアプローチを分析すると、大まかに以下のような分類が可能になる4

  (i) 倫理的、道義的アプローチ: 人間の尊厳を中心とするアプローチで、これまで多くの宗教的団体はこの理念のもとに活動して来た。
  (ii) 基本的人権としてのアプローチ:字を覚えることは基本的人権で、国家が重点的に識字教育を実施する。従来の社会主義国家の例
  (iii) 社会福祉的アプローチ:識字は社会的認知度や尊敬の念を増し、人間として生きる喜びや誇りを強調する。
  (iv) 政治的、戦略的アプローチ:国が政治的統合や国家形成の手段として行う識字活動を指す。国民意識、国家に対する忠誠心を高揚することを目指す。
  (v) 意識化のアプローチ:上記とは反対の立場に立ち、非識字者の立場から、識字を通して体制から疎外された存在を意識し、社会的矛盾や自己の解放を追求する。
  (vi) 技術的、多目的アプローチ:非識字者の動機にそった多角的活動で自己改善、生活や収入の向上、雇用の可能性といった、いわゆるfunctional literacyと指す。

 最近では、意識化のアプローチや多目的なfunctionalアプローチと関連して参加型アプローチや人間的エンパワーメントのアプローチが多く見られる。とくにジェンダーを中心とした識字教育アプローチや貧困削減の一環としての識字教育プロジェクトが広く展開されている。

 一方、最近の目覚ましい情報化や携帯電話の普及は識字の教育にも影響を与えている。これまではコンピューター・リテラシー等は伝統的な識字教育とは全く無関係と思われて来たが、これまで図書や新聞の入り込まなかった地域にも携帯電話が普及するようになり、両者の関連は深まり、新たな識字教育の可能性が予想される。

識字言語の採択
 識字と使用言語の関係は非常に重要であるが、この点についての解明は十分に行われていない。6500以上存在する世界の言語のうち、その82%をアフリカ、アジア、南太平洋地域の言語が占める。教育学者や文化論者は母語による識字を主張する。たしかに母語は一番効果的学習用語であり、文化継承の最重要手段でもある。しかし、半数以上の言語には文字が存在しない。聖書の翻訳等を通してこれらの言語の文字化が進められているが、正書法の確立や文字の一般的普及は十分に進んでいない。無文字言語の文字化は主にローマ字かアラビア文字で行われているが、ローマ字が主流である。アフリカでは、かつての植民地の行政用語であった英語、フランス語、ポルトガル語等がそのまま学校でも識字教育でも教育言語として使用されてきた。しかし最近、識字教育では、各地域の有力な言語を使用する試みが進んでいる。一方、多民族、多言語国家においては、たとえ各言語に文字が存在していても、どの言語を教育言語、識字言語として採択するかはデリケートな問題で、もし判断を誤ると内乱や紛争も起こりかねない。バングラデッシュは民族の言語の国語としての使用を求めて独立戦争を勝ち取った。多くの国では単一主流言語を公用語や教育・識字用語として採択して、国内の少数民族に対して公用語の習得を通して同化政策がとられている。一方少数民族の人々は自己の言葉に対する誇りや重要性は認識するものの、他民族との交流や通商には、公用語かその地域のリンガフランカに頼らざるを得ず、また若者達は、外来の文化への憧れや就職の必要性から、母語による識字教育に熱意を示さない。アフガニスタンやインドのように二言語以上を公用語、教育用語として採択している国もあり、一方インドネシアは独立過程で、最大民族の話すジャワ語ではなく、リンガフランカであったマレー語を国語(バハサ・インドネシア)として採択し、学校教育、識字教育を通して全国民に国語の徹底をはかった。

 言語はその社会や地域の権力構造と密接に関連しており、識字・教育言語の採択は、単に一つの言語を選択する以上の政治的、社会的、文化的問題であり、また教師や教材作成者の育成、教材の印刷、普及という財政問題でもある。教育・識字言語の選択は究極的には当該地域の人々の英知と決断によるべきもので、開発援助担当者といった外部者が直接的に指示・介入することは望ましくない。

識字教育のインフラ
 学校はフォーマル教育のインフラとして認められているが、識字教育のインフラは非常に多様で、個人の家や寺、教会、モスクといった宗教施設、行政の庁舎や図書館、公民館といった社会教育施設、保健、農業等の他分野の施設が使われて来た。少数の住民が散住するアフリカでは、識字キャラバンという移動教室も行われている。この中で最近アジアを中心として日本の寺子屋と同じようなCommunity Learning Center(CLC)が識字教育のインフラとして重視されるようになってきた。その発展の原動力として、ユネスコのAPPEAL5 や日本ユネスコ協会連盟(日ユ協)の世界寺子屋運動があげられる。ベトナムでは日ユ協がJICAの支援のもとに北部山岳地帯に40校のCLCを建設したが、これが爆発的に全国に広がり、現在は6000校以上に増えている。タイはCLCを全村に設置することを決めており、既に7000以上のCLCが存在し、その運営についても最近までの政府主導の識字教育から各地のCLC主導型のノンフォーマル教育に移行している。東南アジアでは非識字者の減少に伴い、識字教育から多角的なノン・フォーマル教育に移行している。

National Will for Literacy:
 ユネスコの識字統計6によると, 世界の非識字者は1990年の8億7175人から2000/2004年の7億9915万に減少しているが、南西アジアでは3億8235万人から4億275万人へ、サハラ以南アフリカでは1億2898万人から1億3700万人にそれぞれ増加している。アフリカとアジア全地域の非識字者は世界の84%を占める。また将来の非識字予備軍ともいえる現在の初等教育非就学児は全世界に1億人以上おり、その85.5%はアフリカとアジアに集中する。従って、アフリカ・アジアは識字およびEFAの最重点地域である。

 識字が伸びない理由として、政治的意志の欠如が指摘されて来た。確かに政府指導者の決意なくして識字の急速な進展は難しい。しかしこれは政治の指導者だけの責任ではなく、識字問題に対する関心の薄さは、行政の面でも教育の専門家の間にもみられる。教育行政は圧倒的に学校教育が中心であり、識字教育の専門家はどの国でも数えるほどしかいない。しかし、問題は、非識字者本人達が識字の重要性を認識しないことである。教育を与える側がいくら努力しても、非識字大衆の学ぶ意志のないところではいかなる努力も無為に終わる。すなわち、政治的(Political)、行政的(Administrative)および専門的(Professional)意志と大衆の意志(Popular will)が一体化して、識字の達成のための国全体の意志(National Will)となることが急務である7

4.主要援助機関・ドナーの政策スタンス

 識字教育の推進のために国際活動を展開している国際機関はユネスコであるが、ユネスコは国連の専門機関で国際援助機関ではない。一方主要援助機関の識字教育に対する関心は非常に低い。 1990年のEFA世界大会の準備の時点で、一共同主催者は、識字教育をEFAの中に位置づけることに強硬に反対したほどであった。現在主要援助機関のEFA援助は、主に学校教育と幼児教育に集中しており、成人非識字者の教育に対する援助は皆無に近い。その主な理由は識字教育のプロジェクトに厳密な計画性が欠けることや非能率なプロジェクト管理体制、アカウンタビリティの欠如等があげられる。地方に広く展開し、小規模な活動が中心で、多くの場合ボランティアを中心に活動が実施されているので、プロジェクトの成果をモニタリング、数値化・指標化することも困難である。しかし、ノルウェーと日本の政府はユネスコアジア教育事務所のAPPEALプログラムに対してEFA(識字教育を含む)の信託基金援助を行った。ノルウェーの援助は終了したが、日本政府の信託基金援助は継続している。またアジア開発銀行もフィリピンのノン・フォーマル教育のプロジェクトを支援した。一方JICAはノン・フォーマル教育協力の指針8 を作成したこととユネスコ・バンコク事務所と共催で2004年にノンフォーマル教育の国際セミナーを開催したことは国際的に注目された。JICAの派遣する青年海外協力隊員の中で、村落開発を担当する隊員の多くは識字活動に従事している。また NGOに対しても草の根支援を行い前述のベトナムやアフガニスタンで成果を上げている。また、外務省在外公館が活用する草の根・人間の安全保障無償資金協力では、現地NGOやコミュニティーが実施する、所得創出活動と組み合わせた女性や青少年に対する識字教育、母語での識字教材の開発等を支援している。

識字支援の主要なアクター
 現在識字教育支援の主要なアクターはNGOである。多くのNGOがノンフォーマル教育を支援しているが、その内容は広域にわたり、必ずしも識字教育に集中している訳ではない。その中で識字教育を中心に活動をしている国際的団体として下記の諸団体があげられる:

  • Action Aid
  • Asia-South Pacific Bureau for Adult Education (ASPBAE)
  • International Literacy Institute (ILI), Pennsylvania Univ.

一方下記の国内NGOも海外で積極的に識字教育支援活動を展開している。

  • シャプラニール‐市民による海外協力の会
  • シャンティ国際ボランティア会
  • 日本ユネスコ協会連盟‐世界寺子屋運動
  • ユネスコアジア文化センター(ACCU)
  • 国際識字文化センター(ICLC)

 紙面の都合で、上記の諸団体の活動について記すことができないが詳細は註8のJICA出版物(「ノンフォーマル教育支援の拡充に向けて」2005年)の他にノンフォーマル教育協力研究会(代表者 渡辺良)の中間報告「開発途上国における成人識字教育協力の実践事例の収集・分析と日本の教育経験をふまえた成人教育モデルの適用可能性についての研究(中間報告)を参照していただきたい。

5.重要文献

ACCU(ユネスコアジア文化センター): ACCU-APPEAL Joint Planning Meeting on Regional NFE Programme in Asia and Pacific 2001

ACCU & UNESCO: Handbook for Adult Learning Materials Development at Community Level, 2001

Ministry of Foreign Affairs of Japan: “Promoting human development through support to literacy: Contributing through Japan’s ODA” (識字支援パンフレット)2005

UNESCO: EFA Global Monitoring Report 2005: Education for All.
The Quality Imperative. UNESCO Publishing 2004
http://portal.unesco.org/education/en/ev.php-URL_ID=35939&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html

国際協力機構(JICA)「ノンフォーマル教育支援の拡充に向けて」 2005
http://www.jica.go.jp/branch/ific/jigyo/report/field/200505_01.html

小林和恵「非識字問題への挑戦-国際社会の取り組みとフィールドからの活性化の試み」 国際協力事業団 2002

千葉杲弘監修 「なぜ識字か 発展途上国の現状(第2版)」 国際基督教大学 教育研究所・リテラシー研究会 2001

千葉杲弘監修 「国際教育協力を志す人のために:平和・共生の構築へ」学文社 2004


1 Fundamental educationと、1970年代に出現したBasic education はともに基礎教育と訳される。 混同を避けるために、ここでは英語を使用した。
2 アルジェリア、エクアドル、イラン、マリ、エチオピア、ギニア、マダガスカル、タンザニア、ヴェネズエラ、スーダン、インド、シリア、アフガニスタン、ケニア、ニジェール、ザンビア
3 UNESCO and UNDP, The Experimental World Literacy Programme: A critical assessment, The UNESCO Press and UNDP, 1976
4 千葉杲弘監修 国際教育協力を志す人のために:平和・共生の構築へ 学文社 2004、221‐222ページ
5 Asia-Pacific Programme of Education for All、UNESCO
6 UNESCO: EFA Global Monitoring Report 2005: Education for All. The Quality Imperative, 2004, UNESCO Publishing
7 Akihiro Chiba: "International Literacy Watch: Warning against lip-service" Adult Education and Development No. 47, IIZ DVV, 1996 pp.275-292
8 JICAでは、2004年に「課題別指針(ノン・フォーマル教育)」を策定し、2005年に調査研究報告書「ノンフォーマル教育支援の拡充に向けて」を作成した。


DAKIS課題別基礎情報>セクター:教育・識字教育と開発