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ミレニアム開発目標
- Millennium Development Goals: MDGs -

GRIPS 秋山スザンヌ
FASID 加山美鶴

 2000年9月の国連ミレニアム・サミットにおいて国連ミレニアム宣言ならびにミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)が採択されて以来、国際開発援助に関わるアジェンダがMDGsという枠組みに集約されている。MDGsは、貧困削減に加え、それを包括する教育、保健医療、環境などの分野において2015年までに達成すべき具体的な目標を掲げたものである。MDGsの意義は、1990年代の主要な国際会議やサミットで議論された様々な開発課題をひとつの共通の枠組みの中にまとめ、重要な開発目標の国際的共有を促すと共に、これらの開発目標に向けての各国際援助機関およびドナーのコミットメントを取り付けたことにある。但し、アフリカにおけるモニタリングのための統計整備が難航している等、実施面では課題が山積しており、MDGsの達成に向けての国際社会の一層の努力を促すための議論が開発を巡る主要国際会議で展開されている。

(1)定義

 MDGsとは、2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットにおいて、147カ国の国家元首によって採択された2015年までの国際社会が取組むべき開発目標のことである。1990年代からの人間開発や貧困削減に開発援助の焦点が置かれるべきだという議論が強まっていたことが背景にある。
 目標は以下の8つである。

  1. 極度の貧困と飢餓の撲滅
  2. 普遍的初等教育の達成
  3. ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
  4. 幼児死亡率の削減
  5. 妊産婦の健康の改善
  6. HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止
  7. 環境の持続可能性の確保
  8. 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

 各目標のもとでの合計18のターゲット・48の指標も合意されており、それらが工程表としてまとめられている。詳細は(7)関連文献・ウェブサイト−6を参照。

(2)歴史的背景

 21世紀に向けてのOECDの開発戦略書である“Shaping the 21st Century, the Contribution of Development Cooperation”の成果を具体的に測るために、国際開発目標(International Development Targets: IDTs)を設定することがOECD諸国によって1996年5月に合意された。この合意を得るために、日本政府は相当な貢献をした。このIDTsに、2000年9月の国連ミレニアム・サミットで多少の修正が加えられ、MDGsとして採択された(主な違いは目標8が加えられたことである)。MDGs達成には今まで以上に援助資金が必要であるという議論から、援助増額を目指した国連開発資金会議(International Conference on Financing for Development)が2002年3月にメキシコ、モンテレーで開かれ(DAKIS最新開発援助動向レポートNo.1及びNo.2参照)、数年以内のアメリカの50億ドルの援助増額、並びにヨーロッパの多額な援助資金増大が約束された。

(3)理論的考察

 MDGsの方針は、1990年以来UNDPが推している人間開発に焦点を当てた開発およびWolfensohn総裁の影響によって築かれた世銀の貧困削減戦略と通じている。
 UNDPは、1990年の人間開発報告書の発刊以来、従来から重視されてきた経済成長の側面のみならず、人間の生活水準を形成する上で根幹である保健医療・教育、しいては自らの意思に基づき人生の選択と機会の幅を拡大させるといった基本的能力の追求を含む包括的開発の概念を提唱し、これは人間中心の開発に対する国際社会の注目を集める契機となった。
 一方、世銀は、1990年世界開発報告書において貧困を“最低限の生活水準を確保する能力の欠如(the inability to attain a minimal standard of living)”と定義した上で、貧困と戦うためには経済成長と貧困層を対象とする保健医療・教育への投資という二本柱の戦略を謳い、以来今日までこれが世銀の援助戦略を形成する基本的な考え方となっている。
 このような主要国際機関の開発援助戦略の変遷を受け、経済発展を至上とした援助戦略から、より社会セクターに力点を置いた援助戦略への転換の要請がMDGs採択の背景としてあったと言える。しかし、MDGsはあまりにも貧困に焦点を当てすぎ、経済発展を軽視している傾向があるという議論も多々ある。

(4)最近の議論・論争点

 (3)で述べた課題の他では、MDGsには統計上・定義の問題があり、これらの目標を達成することは非常に難しいと援助の現場から報告されている。また、Wolfensohn世銀総裁、Annan国連事務総長の最近の発言からもMDGsを2015年までに達成するのは容易でないことが伺われる。
 目標8「開発のためのグローバル・パートナーシップの推進」において、貿易、債務救済、移民、海外直接投資などの分野を含めた先進国のMDGs達成に向けた包括的な取り組みが議論されている。WTO会議でも重要課題のひとつとして挙げられたように、今後先進国の国内農業補助金および途上国からの輸入品の貿易関税などの問題をどのように対処していくのかということが争点となっている。このような先進国の途上国に対する政策の一貫性を評価する試みの一つは先進国の途上国の貧困削減に対する取り組みの指標としての「開発コミットメント指標(Commitment to Development Index)」に基づく先進国のランク付けであり、それは2003年5月Foreign Policy誌/Center for Global Developmentで発表され(DAKIS国際援助の新しい潮流:文献紹介No.28参照)、援助関係者に注目されている。

(5)主要援助機関・ドナーの政策スタンス・実績

 2000年9月にMDGsが採択されて以来、世界の主要国際援助機関はMDGs達成に活動を集約させており、多くの会議・出版物でも大きくとりあげている。UNDP、世銀のほか、教育に関してはUNESCO、保健・医療にはWHOなどの機関が関わっている。
 UNDPはMDGsの進展をモニターする役割(Score keeper)を担っており、途上国にある事務所を通して各国の進展状況を調査している。人間開発報告書2003年版においては、「ミレニアム開発コンパクト」と呼ばれる2015年の目標達成へのロードマップとなる行動指針を国際開発援助コミュニティに提唱し、目標達成のために必要とされる多様かつ包括的なアプローチを一貫した枠組に集約させる機能を果たした。
 世銀は近年MDGs達成を最重要戦略のひとつに掲げている。2003年度年次報告書において、MDGs達成へのアプローチとしてインフラへの投資が重要であると指摘し、インフラ投資に改めて関心を示しはじめたことが注目される。また、2003年9月に行われたIMF・世銀年次総会においては、MDGs達成の国別コスト試算が提出されている。
 主要ドナー国の中では、イギリスがMDGs達成に非常に熱心である。この背景として、英国国際開発省(Department for International Development: DFID)のClare Short元大臣が貧困削減に情熱的ともいえる熱意を持っていたことがあげられる。2003年のDFID年次報告書においても、DFIDのMDGs達成に向けての貢献が詳細にわたって述べられている。イギリスは、国際資金支援制度(International Finance Facility: IFF)というMDGs達成に必要とされる開発援助資金のドナーおよび市場からの調達並びに配分を行う枠組み構想を打ち出している。
 他方、アメリカもMillennium Challenge Account(MCA)を設け、今後50億ドルを注入し貧困削減への貢献の意欲を示そうとしている。英以外の主要諸国についてはそれぞれの援助戦略があり、リップ・サービスはするがどこまで本腰を入れるのか疑問である。因みに「人間開発報告書2003」によれば、国連開発資金会議(2002年モンテレイ会合)ドナーが追加支援を表明した2006年までの援助額は、年間160億ドルにとどまり、追加必要最低額である年間500億ドルに遠く及ばない。

(6)日本のMDGsに対する姿勢、問題点等

 日本は2003年8月閣議決定された新ODA大綱にMDGs達成の明記はしなかったものの、貧困削減に積極的に取組み社会開発や人間開発を支持していく方針を定めている。かかる方針の下、日本政府はMDGsの達成を経済協力の目的の重要な柱のひとつとして位置付けており、例えば2004年度外務省は、UNDPとMDGsの進捗状況のモニタリングに関する共同研究を進める意向を表明している。但し、以下のような問題点があるように思われる。1)この分野は円借款にあまり適さないので基本的に無償、技術協力、国際機関を通じた支援が中心となるが、ODA予算頭打ちの状況下、大幅な援助増額は困難があること、2)社会関連インフラに関する経験および専門家が少ないため、民間セクターやNGOの貢献が求められるが、それらは期待に応えうる水準まで力をつけていないこと、3)今まで我が国が基本開発戦略として重点を置いてきた成長のための経済インフラ投資は、貧困削減を最終目的とするMDGsとはアプローチが異なること。但し、3)に関しては、貧困削減の文脈の中で経済インフラが再び脚光を浴びつつあり、今後日本の援助の役割が増すことは充分に考えられ得る。

(7)関連文献、研究機関・研究者、ウェブサイト

  1. 世銀が行ったMDGs達成のために必要なコストの推計については:
    Devarajan, Shantayanan, Margaret J. Miller, and Eric V. Swanson (2002), Goals for Development: history, prospects and costs," World Bank Policy Research Working Paper 2819, April

    http://econ.worldbank.org/files/13269_wps2819.pdf

  2. UNDPのMDGs達成の戦略は:
    DevLink (UNDG) website: The UN and the MDGs: A Core Strategy, July 2002

    http://www.un.org.dj/UNDJ-RC/the%20UN%20and%20
    the%20MDG%20A%20Core%20Strategy.pdf


  3. 国連事務総長による最初のMDGsに関する報告は:
    UN (2002), A/57/270, Implementation of the United Nations Millennium Declaration, Report of the Secretary General, July.

    http://ods-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/
    GEN/N02/506/69/PDF/N0250669.pdf?OpenElement


  4. 国連によるプログレス・レポートは:
    UN (2002), United Nations Millennium Development Goals, Data and Trends, 2002, Report of the Inter-Agency Expert Group on MDG Indicators,April.

    http://millenniumindicators.un.org/unsd/mi/mdg_report.pdf

  5. 詳しい目標、ターゲットの説明は:
    UNDP website

    http://www.undp.org/mdg/
    Millennium%20Development%20Goals.pdf

    OECD website

    http://www.oecd.org/dataoecd/3/45/1896978.pdf

  6. ミレニアム・プロジェクトの説明、及びミレニアム・プロジェクト・タスクフォースのバックグランド・ペーパー、セクター別の進行状況は:
    ミレニアム・プロジェクトwebsite

    http://www.unmillenniumproject.org/html/about.htm

  7. 国連開発グループ(United Nations Development Group: UNDG)運営のMDGsに関するメーリングリストMDG Network (MDGNet)は:

    http://www2.undg.org/content.cfm?id=80

  8. 我が国のMDGsの達成に向けた努力に関しては:
    外務省ODA website

    http://www.mofa.go.jp/
    mofaj/gaiko/oda/siryo/siryo_2/siryo_2f.html

  9. 各国の進展状況及びミレニアム開発コンパクトに関しては:
    United Nations Development Programme (2003), Human Development Report 2003 Millennium Development Goals: A Compact among nations to end human poverty

    http://www.undp.org/hdr2003/

  10. 「人間開発報告書2003年度ミレニアム開発目標(MDGs)と人間開発」に関する文献紹介は:
    FASID DAKIS website

    http://dakis.fasid.or.jp/report/pdf/BriefingReviewNo31.pdf


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