DAKIS課題別基礎情報>セクター:NGO
DAKIS
各種報告書
Journal Express
開発援助の新しい潮流:文献紹介
最新開発援助動向レポート
課題別基礎情報
セクター:
教育
保健・日本のNGOの活動
環境・水
農村開発
Research and Extension
平和構築
ジェンダー
産業政策
経済インフラ
貿易
Social Capital
ディスカッション・ペーパー
「国際開発援助動向研究会」会合の議事録
有益関連リンク集
ORCS(ODA調査研究協力システム)
"DAKIS"内の情報を検索します。
課題別基礎情報
セクター

「NPO/NGOと国際協力」
富山大学大学院教育学研究科教授
佐藤 幸男

 1. 課題の定義

 日本の国際協力の形態は多様であり、その領域も錯雑である。ODA主体の国際協力とNGOによるボランタリーな国際協力との間にさまざまな組織や団体が介在して行われている。本論では、おもに市民のボランタリーな参加による国際協力の現状と変遷を考える。
 日本が1954年から始めた政府開発援助(ODA)は2004年でちょうど50年目を迎えたと同時に、経済協力開発機構(OECD)に加盟して40年になる。ここではとくに、「開発」のための援助の歴史や動向をふまえながら論をすすめる。
 まず、はじめにNGO・NPOとはなにかを考えてみよう。日本においては、NGO(非政府組織)とNPO(特定非営利法人)を使い分ける傾向がある。NGOはとくに途上国での国際的な活動を行う組織として、1980年代頃から普及し始めた。これに比してNPOは比較的新しく、90年代半ば以降、市民による文化・福祉活動など地域に活動する組織として広まりをみせた。しかし、ともに市民主体の協力活動であることに変わりはなく、利潤を追及せず、自発性に基づく組織からなる。国連はこれら組織を総称して市民社会組織(CSO)と名付けている。なかでもNGOによる国際協力活動はその総額においても、またその機能においても無視しえないほどの影響力をもつにいたっている。世銀によれば、NGOの国際開発協力の総額は年間85億ドルにのぼり、2002年度日本の政府開発援助に匹敵している規模であると推定している。しかも、NGOは年々その発言力を強め、市民の動員と協力なしには「顔の見える」国際貢献がなしえなくなっている。こうしたNGOの潜在力は、国際協力の諸分野で市民権やアドボガシー(弱者の権利擁護)を主眼に「公益」的な活動をし、いまや世界中に数十万の団体を創設するまでに成長してきている。

 2.歴史的背景

 ここでは、国連とNGOの動向を冷戦期と冷戦終結以後とにわけて概観しておこう。
  (1) 1990年以前
 国際連合はそもそも加盟国政府中心の機構であるが、その憲章にNGOという言葉をはじめて明記し、以後国際社会にNGO参加の道を拓こうとしてきた。こうした経緯からNGOは、経済社会理事会の傘下で認定され、参加資格をえたのである。NGOはこの時期、「国際圧力団体」と訳されるほど、冷戦と相まって国際的な労働組合を中心として登録される傾向が強かった。しかし、60年代以降、国連は「国際開発の10年」を計画し、途上国の貧困や開発問題に積極的に提言、関与するようになったことで、NGOの登録や参加に変化がみられるようになった。70年代以降、国連は「グローバル・シリ_ズ」と呼ばれる地球規模の問題についての世界会議と国際年を提唱しはじめる。その皮切りが、72年ストックホルムで開催された国連人間環境会議であり、以後国連は、環境をはじめ、人権、女性、開発など新たに生じる経済社会問題に適切に対処するうえで、NGOの活用を不可欠としたのである。「NGOなくして国連が機能しない」といわれるゆえんである。南北問題の深化とともに、後発発展途上国(LDC: Least Developed Countries)、最貧国と呼ばれる途上国のなかでもっとも発展が遅れ、世界経済から取り残される国が陸続として誕生した。1971年、国連は1人当たり国民総生産が100ドル以下、GDPに占める製造業比率が10%以下、識字率が20%以下の国として25ヶ国をリストアップしたほどである。現在ではその基準が改定され、1人当たりのGDPが900ドル以下、人的資源開発指標(健康、教育、平均余命など)と経済的脆弱性(小規模経済のハンディキャップ、輸出産品の特化)、人口7,500万人以下などを加味した基準から49ヶ国が指定され、世界総人口の1割強に相当する6億1050人がこれに含まれているが、依然として国際協力の面で特別の配慮を必要とされる国々がいまなお数多く存在している。
  (2) 90年代以降から現在まで
 90年代、冷戦の終結とともに、南北問題も国際政治上に争点としては希薄となるなかで、民族紛争の多発をはじめとして「平和構築」や地球規模問題群として措定されたグローバルな社会問題への対応が浮上した。国連行動計画の対象とする「地球規模問題群」とは、アフリカ・イニシアティヴ、高齢化、農業、原子力、児童、気象変化、文化、脱植民地化、地雷除去、開発協力、身体障害者、軍縮、薬物規制、教育、選挙、エネルギー、環境、家庭、統治、居住、保健衛生、人権、先住民、知的所有権、国際金融、労働、国際法、海洋法・南極条約、最貧国、国連ミレニアム総会宣言、パレスチナ、平和・安全保障、人口、難民、社会開発、宇宙、統計、持続的発展、テロ、貿易・開発、ボランティア活動、女性、青少年をさしている。
 ところで、90年代から国連開発計画(UNDP)は、「人間開発」(Human Development)という新たな概念を提示した。人間開発とは、社会の豊かさや進歩を測るのに経済指標だけではなく、人間が自らの意志に基づいて人生の選択と機会の幅を拡大させることが開発の目標であるという認識のもと、毎年『人間開発報告(Human Development Report)』を発表している。物質的・経済的豊かさに加えて、これまで数字に現れなかった側面、すなわち教育をうけ、文化活動に参加でき、バランスのとれた食事をとって健康で長生きができ、犯罪や暴力のない安全な生活がおくれ、自由に意見が言え、社会の一員として認められ、自尊心を持てることで真の「豊かさ」を実現できると考え、人間開発指数(HDI: Human Development Index)を中心に、長寿、知識、生活水準の3分野について各国の達成度を測定している。2003年度版では、とくに、アフリカ、そのなかでもサハラ以南アフリカ地域における貧困の現状が浮き彫りにされ、特段の支援を要する59ヶ国のうち、38ヶ国のサハラ以南アフリカ諸国が90年代に所得を減らし、2人に1人が1日1ドル以下で生活し、3人に1人の割合で子供が小学校を修了できず、6人に1人の子供が5歳になるまで生き延びられない状況が報告された一方で、貧困者に重点をおいた政策(Pro-poor Policy)や市民社会、民間セクターを巻き込んだ開発が成果をあげている事例が示され、多角的な国際協力の必要性を強調している。
 こうしたなか国連は、2000年9月ミレニアム・サミットを開催し、国連ミレニアム宣言のもと、2015年までに国際社会が達成すべき開発目標を策定した。これをミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals)と呼び、貧困と飢餓の撲滅、普遍的初等教育の達成、女性の地位向上、乳児死亡率の削減、妊産婦の健康改善、HIV/エイズを中心とした感染症疾病の蔓延防止、持続可能な環境の確保、開発のためのグローバル・パートナーシップの推進を掲げ、また、世銀は貧困削減戦略文書(Poverty Reduction Strategy Paper)で、市場経済化と成長促進を志向する構造調整政策体制から「良いガバナンス」と貧困削減を目指す援助政策に転換する方針を掲げた。
 また、90年代に入り、民族紛争が多発するなかで国際協力の形態としての多国間型の国際協力も活発化するようになった。なかでもアフガニスタン復興支援国会議やアフリカ開発会議(TICAD3:Tokyo International Conference on African Development)などがその好例である。アフリカ開発会議は、1993年第1回目の会議が開催されてから5年ごとに開催され、2003年9月で3回目となった。この会議は、UNDP(国連開発計画)、UNOSCAL(国連アフリカおよび最貧国特別調整室)、GCA(アフリカのためのグローバル連合)、世銀と日本政府との共催によって開かれると同時に、 NGOも連合体(ACT2003:Action Civile pour TICAD)を組織し、本会議に参加するようになった。くわえて、2005年には、国連ミレニアム開発目標5年目を記念してサミット総会が開催される予定であり、開発問題、とくにアフリカの開発問題が重要課題として再浮上する可能性が高まるなかで、NGOとの協働に大きな期待が寄せられている。

 3.理論面からの考察

 国連を中心とした国際社会(国際共同体ともいう)における多国間国際協力や多様なNGO活動が顕在化してきた今日、国際理論の領域でNGOと国際協力とを連結させる考え方が不可欠となってきた。それには大きくわけて2つの捉え方がある。一つは、「現実主義的」認識に依って立つグローバル・ガバナンス論や地球公共財(Global Public Goods)論がその代表的なものである。なかでも地球公共財論は、UNDPによって提唱された概念である。地球公共財とは、相互依存の管理を通じて、地球上すべての人がグローバル化の恩恵を受けられるようにするために、技術的・経済的事由から排除できない財、公共性が意図された財や義務の不履行によって生じる公共性をもつ財(汚染など)を、拡大する地球規模の不平等に照らしながら是正する政策アプローチのことである。国際金融市場の混乱、市民社会と民間セクターの多国籍的な活動を視野に入れた国連改革や国際レジームの構築もこうした考え方を反映している。
 一方、草の根の視点からアプローチしようする理論がある。その代表的なものが内発的発展論や参加型開発(Participatory Development)論である。とくに、参加型開発は、開発戦略がさまざまに変容するなかで、開発援助プロジェクトが専門家の手に委ねられ、啓蒙するという図式を問い直し、対象住民の声に耳を傾け、外部から参加する側の姿勢を問題にしようと提唱されたものである。英サセックス大のR・チェンバース教授の提唱するこの概念は近年、再検討され、途上国貧困層の生活の質の向上にむけたSL(Sustainable livelihood)アプローチに転換し、ふたたび実践されはじめている。

 4.最近の議論・論点

 (1)市民社会組織(CSO: Civil Society Organization)論
 国連は近年、NGOやNPOなどに代表される民間団体や地方自治体などの非営利組織を包括して、国家を代表しないすべての組織を「市民社会組織」と呼んでいる。また、こうした市民社会組織は、国際連帯組織あるいは人道主義活動組織と呼ぶこともある。ここでいう市民社会とは、欧米社会の近代ブルジョア国家における「市民」をさすわけではなく、国家と個人あるいは国家と家族とのあいだにある公共空間(public space)で自発的な諸組織の活動が、社会的紐帯によって保持され、国家と異なる次元で国家権力に対抗しうる対抗イデオロギーが形成され、国家を相対化しつつ国境を超えて活動し、国際的・越境的なネットワークを広げ、インターネットを駆使して市民の関心が国際連帯からグローバルな運動へと押し広げる変革運動の主体をさしている。
 (2)ガバナンス(Governance)論
 これは公共部門の管理改善と参加や市民社会の重要性に直目して提起された概念である。途上国政府の国民への説明能力の欠如、政策決定過程の不透明性など「統治」の問題が指摘されるようになったことで民主化や統治能力の向上に向けた支援をめぐる論議が活発化している。なかでもシビル・ガバナンス(Civil Governance)は戦争、平和、人権、環境といった市民社会が直面する日常的な問題を「市民」の側から問う領域で、NGOのような社会組織が市民の利益擁護を目的に、ときには企業のような社会集団と切り結びながら、時には地方自治体と渡り合い、また政府と緊張関係をかもしだしながら、あるいは国際組織をも巻き込むかたちで市民的権利の実現を図ろうとする「開かれた民主主義」社会の健全な姿を追及しようとするものである。
 (3)反グローバリズム(anti-globalism movement)と地球市民社会論
 世界中の人びとが新自由主義的グローバリズムに反対するデモを世界各地で繰り広げ、1999年のシアトルのWTO閣僚会議を皮切りに、主要な先進国会議をターゲットにした抗議運動が世界各地で起きている。経済のグローバリゼーションの主役である多国籍企業が飽くなき利益追求のために貧しい人びとが犠牲にすることへの抗議と、こうした企業活動を支えるサミット、WTO、IMF、世銀といった国際経済を管理する機関を監視し、変革を求めている「新しい社会運動」が台頭してきた。そのひとつに世界社会フォーラム(world social forum)がある。こうした一連の地球規模での変革と市民参加を基礎に民主化を求める運動を理論的に追求したのが地球市民社会論であり、グローバル・デモクラシー理論である。

 5. 主要援助機関・ドナーの政策スタンス

(1) OECDおよび二国間援助機関
 2001年9月11日の同時多発テロをうけて以後、貧困問題とテロとの関係や平和構築の重要性が問題視されるようになったことで、米国は2006年度までに開発援助予算を50%増額すること、EUもまた、同年度内までに開発援助予算を対GDP比で現在の0.33%から0.39%に増額することをそれぞれ表明している。と同時に、西欧援助国や世界銀行などは被援助国にたいして政策基準を定めて、援助対象を選択し、実施する傾向を強めてきている。これをセレクティビティ(援助の選択性)といい、援助効果の質的向上にむけて英国、オランダ、ドイツなどは貧困削減を最優先策に掲げ、NGOと協働して推進しようとしている。また、貧困削減以外にオランダやドイツは環境対策を取り上げ、資源保護、環境教育、職業訓練を重点的に支援する方針を明確に打ち出している。
 くわえて、その援助手法は、英国、オランダが直接財政支援あるいはセクター財政支援を重視しているのに対して、ドイツはプロジェクト型支援を基本としている。米国国際開発庁(USAID)もまた、技術協力を手法として持続的な開発と人道的対応による民主化と人権を対象にして選択的支援を明確にし、NGOとの連携を不可欠としている。
(2) 国際機関
国連諸機関や世銀、アジア開銀もまた、国別援助戦略を策定し、ガバンスの要素や開発プロジェクトの質に配慮した支援策を重視するようになってきている。参加、エンパワーメント、社会開発、人間開発、持続可能な生計(sustainable livelihoods)といった新しい概念は、こうした「役立つ援助」のための施策として提案されたものである。また、UNDPは開発のための能力(Capacity for Development)という提案を行っている。2002年に旧来の開発問題に対する新しい解決策と題する技術協力のあり方について批判的に取り上げて、UNDPは能力開発、オーナーシップ、知識を軸にした開発の進め方を提言した。とくに、UNDPが重視するのは社会レベルにおける能力開発で、公的組織の能力向上、ドナー国と途上国との相互関係の強化といった個人、組織、社会との三位一体型の能力開発が重要であり、知識もまた、従来では先進国から途上国へ単純に移植されるものと考えられがちであったものを、学習者の意欲的な知識獲得へ転換なければならず、開発に携わる人々の間で広く共有されるものでなければならないとする見解をしめしている。

 6.日本の諸機関の動向

(1) 外務省によるNGO支援事業
 ODAによるNGO支援事業とは、NGOを活用した途上国支援の制度であり、日本のNGOを対象とした資金協力制度としてNGO事業補助金(一部を除き平成15年度で終了)、及び日本NGO支援無償資金協力(平成14年度に創設)があり、また主に海外のNGOを対象とした制度として小規模無償資金協力(95年からは草の根資金協力として、また、2003年からは草の根・人間の安全保障無償資金協力に名称を変更)がある。これらはいずれも、NGOが実施する農村開発、人材育成、女性自立支援、保健衛生、医療、地域産業振興、生活環境、環境保全、開発福祉支援などの各分野の開発協力活動に対して資金協力がなされている。
(2) 国際協力機構(JICA: Japan International Cooperation Agency)
 国際協力事業団が2003 年度央より独立行政法人に移行し、緒方貞子元国連難民高等弁務官を理事長に迎え、「国際協力機構」に生まれ替わった。現在、JICAはとくに「草の根技術協力」活動をNGOなどに委託するなどして、1件当たり1,000万円規模の小規模事業を中心に国際協力を推進している。

 7.重要文献

馬橋憲男(1999)『国連とNGO』有信堂。
高畠通敏編(2003)『現代市民政治論』世織書房。
国際協力総合研修所編(2003)『援助の潮流がわかる本』国際協力出版会。
西川潤/佐藤幸男編(2002)『NPO/NGOと国際協力』ミネルヴァ書房。
神野直彦/澤井安勇編(2004)『ソーシャル・ガバナンス』東洋経済新報社。
Keiko Hirata.(2002), Civil Society in Japan: The Growing Role of NGOs in Tokyoユs Aid and Development Policy. Palgrave.N.Y.2002.

 8.関連サイト

  1. 国際協力NGOセンター
    http://www.janic.org/

  2. 外務省ODA白書
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index.html

  3. 世界銀行
    http://www1.worldbank.org/

  4. オックスファム・インターナショナル
    http://www.oxfam.org/eng/

  5. Center for Global Development
    http://cgdev.org/


DAKIS課題別基礎情報>セクター:NGO