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南南協力
財団法人国際開発センター
シーク美実

1. 課題の定義

 「南南協力」は、南の国々と称される開発途上国がお互いの優れた開発経験や技術を学習し共有することによって開発を効果的に進め、ひいては自立発展に努力するための協力形態である。一般に、開発途上国同士の技術協力を指す「開発途上国間技術協力(Technical Cooperation among Developing Countries: TCDC)1」と、政府間経済協力及び民間セクターによる投資・貿易分野の開発途上国間協力を指す「開発途上国間経済協力(Economic Cooperation among Developing Countries: ECDC)2」の2つを含めた概念として使われている。

 日本の南南協力支援は、主に、ODA技術協力の実施機関である独立行政法人国際協力機構(JICA)により行われている。また、その支援内容は技術移転を通した人材育成や能力強化が中心となっているため、日本の南南協力支援の多くは、上述のTCDCにあたる。

2. 歴史的背景

 1970年代、北から南への協力関係を補完するため、開発途上国間で水平協力をしようという動きが高まった。従来、開発途上国の発展には先進諸国からの資金・技術援助の提供に依存せざるを得ないとの考えが主流だったが、開発途上国の多様化が進み、開発途上国相互の協力の重要性が認識されるようになった。

 1970年代には、国連システムの中で南南協力を支援する枠組みが形成された。国連開発計画(UNDP)は、1974年の国連総会を契機にSpecial Unit for Technical Cooperation among Developing Countries (SU/TCDC)を設置し、1975年に開催された委員会で、南南協力に対する各国政府の関与と技術協力プログラムの実施に関する方針「New Dimension」を採択した。また、1978年、ブエノスアイレスで開催された「途上国間協力に関する国連会議」で、「途上国間協力の推進と実施のためのブエノスアイレス行動計画」が採択され、TCDCの概念が整理された。同行動計画は、「国際機関及び先進諸国は開発途上国間協力に貢献できるような開発途上国(機関)に対し、財政支援等を与えること」、「開発途上国間協力を支援するために技術協力に関する政策や手続きを改善すること」等、開発途上国間技術協力の推進に関し採るべき行動として38項目からなる具体的措置を勧告している。

 1970年代の南南協力に関する世界的な潮流を踏まえ、1980年代以降も、南南協力について、活発な議論や活動が展開された。Group of 77 (G77)3は、1981年、開発途上国間経済協力に関する「カラカス行動計画」を策定、1997年には、その見直しとなる「サンホセ行動計画」を含む各種南南協力関連の決議・宣言を採択し、南南協力の推進に向けた取り組みを「南」側の集団的自助という観点から積極的に行っている。また、1993年にはアジア・アフリカ協力を基調の一つとする「アフリカ開発会議(TICAD)」が開催され、2000年4月には、第1回「南サミット」で、グローバリゼーションのもたらす課題に対応するための有効な手段の一つとして南南協力の重要性が強調された。TICADは2003年に10周年を迎え、その記念として同年9月に東京においてTICADIIIが開催された。同会議の結果を踏まえて作成されたTICAD10周年宣言では、TICADプロセスの功績の一つとして、アジアの経済発展の成功体験を活かしたアジア・アフリカ間の南南協力の重要性が評価されている。

3. 主要援助機関・ドナーの動向

 南南協力において特に活発なドナーは、UNDPと日本である。UNDPは、南南協力の実施を推進する国際機関として、開発途上国間技術協力に関する活動を積極的に行っている。前述の歴史的背景で概観したとおり、UNDPは、1996年に「New Directions for TCDC」を発表して以来、国際情勢の変化にあわせ新しい南南協力の方向性に関する提案を行っている。最近では、2001年1月、開発途上国間技術協力に関する第2次協力枠組み(2001-2003)を採択し、今後この枠組みに基づき南南協力を推進していくとしている。日本は、1986年に国連開発計画の中に「日本・人造り基金」(Japanese Human Resources Development Fund、略称JHRDF)を設置し、1996年に右基金の枠内で新たに使途を南南協力に指定した「南南協力のための基金」(South-South Cooperation Fund)を設置している。日本の「南南協力のための基金」に対する任意拠出金は、1996年の200万ドルに始まり、1999年には550万ドルに増加している。また、日本は国際協力機構(JICA)を通した支援も数多く行っている。その他のドナーについては、UNDPや日本ほど積極的な姿勢は見せていないものの、米国は保健分野、EUは地中海パートナーシップを設立して自由貿易圏の設置をめざす方向で、それぞれの方針に沿って南南協力に取り組んでいる。

4. 日本の南南協力支援への取り組み状況

 新ODA大綱(2003年8月29日閣議決定)の基本方針においては、国際社会における協調と連携を図る手段として、アジアなどにおけるより開発の進んだ開発途上国と連携して南南協力を積極的に推進することを強調しており、南南協力は日本の主要な援助政策の一つとして位置づけられている。また日本は、特定の南南協力の実施国と共同で周辺の途上国へ協力を行うため、総合的な枠組みを政府間で合意し、枠組み文書の署名を交わすパートナーシップ・プログラム制度を設けている。2003年までに、タイ、シンガポール、エジプト、チュニジア、チリ、ブラジル、アルゼンチン、フィリピン、モロッコ、メキシコ、インドネシアの11カ国が同プログラムの枠組み文書に合意している。

2002年までに締結されたパートナーシップ・プログラムの一覧
名称 相手国 開始年
日本・タイパートナーシップ・プログラム (Japan-Thailand Partnership Programme) タイ 1994
また、2003年にフェーズ2に係る枠組文書を締結
21世紀のための日本・シンガポール・パートナーシップ・プログラム(Japan-Singapore Partnership Programme for the 21 Century) シンガポール 1997
日本・エジプト三角技術協力計画(Japan-Egypt Triangular Technical Cooperation Programme for the Promotion of South-South Cooperation in Africa) エジプト 1998
日本・チュニジア三角技術協力計画 (Japan-Tunisia Triangular Technical Cooperation Programme for the Promotion of South-South Cooperation in Africa) チュニジア 1999
日本・チリパートナーシップ・プログラム (The Japan-Chile Partnership Programme) チリ 1999
日本・ブラジルパートナーシップ・プログラム (The Japan-Brazil Partnership Programme) ブラジル 2000
日本・アルゼンチンパートナーシップ・プログラム(Partnership Programme for Joint Cooperation between Japan and Argentina) アルゼンチン 2001
日本・フィリピンパートナーシップ・プログラム (The Japan-Philippines Partnership Programme) フィリピン 2002
日本・モロッコ三角技術協力計画(Japan-Morocco Triangular Technical Cooperation in Africa) モロッコ 2003
日本・メキシコ・パートナーシップ・プログラム(Japan-Mexico Partnership Programme: JMPP) メキシコ 2003
日本・インドネシア・パートナーシップ・プログラム(Japan-Indonesia Partnership Programme: JIPP) インドネシア 2003
出典:外務省のHP公開情報を基に筆者が作成 

 援助実施のレベルでは、UNDPの「南南協力のための基金」に対する拠出の他、JICAが第三国研修4、第三国専門家派遣5、三角協力プロジェクト6、開発途上国援助実施関係者に対する援助実施能力の育成等の事業を行っている。第三国研修実施件数及び第三国専門家の派遣件数は、94年から徐々に増加し、97 年以降急増している。

第三国集団研修の実績の推移
(1994-2001年度)
出所: JICA企画・評価部「JICA事業における南南協力支援の概要(暫定)」平成14年10月
 
第三国専門家派遣人数の推移
(1995-2001)
出所: JICA企画・評価部「JICA事業における南南協力支援の概要(暫定)」平成14年10月

5. 理論面からの考察と最近の議論

 南南協力は、「開発援助の概念」というよりむしろ開発の運営にかかる有効な手段の一つとして捉えられており、また、これは先進諸国から開発途上国への支援の代替手段ということではないではなく、むしろ補完的手段であると考えられている。

 開発途上国間の協力においては、開発段階や言語・文化、宗教等について共通点が多いという利点を生かすことで、先進諸国による援助に比べ技術的にも適正なレベルで且つ円滑に技術移転を行うことが可能となる。また、開発途上国による技術協力は先進諸国が行う場合よりも低コストである場合が多く、開発資源の効率的な活用(先進諸国側の視点では経費節約効果)につながる。さらに、南南協力の実施は、援助実施主体の裾野を広げることにも繋がる可能性がある。

 以上のような可能性が認められるものの、開発途上国(協力実施国)のキャパシティー上の制約があるため、実際に期待通りの成果を上げることは容易でない。このような状況から、開発途上国が有する開発能力を活用しつつも先進諸国の技術と資金及び援助実施のノウハウを補完的に投入しながら、開発途上国間の協力に先進諸国(北)も参加して取り組む「南・南・北」による「三角協力」の形態をとることが一般的となっている。

 南南協力において日本をはじめとする先進諸国に求められていることは、開発途上国の間で欠如しているリソースを補完する「ファシリテーター」としての役割である。具体的には、南南協力案件の発掘_形成_実施の各段階で必要とされている技術的なアドバイスや援助実施のノウハウの提供、先進諸国が蓄積している開発途上国に関する情報の共有、資金面での補完的なサポートがある。さらに、援助の実施主体を拡大するという観点から、南南協力を支援する上で開発途上国のオーナーシップの確保に留意することも大切である。日本の南南協力支援プロジェクト(特に第3国研修)では、協力実施国がプロジェクト費用の一部を負担7することを原則とすることで、協力実施国のオーナーシップの向上に努めている。

6. 関連リンク及び文献

  1. 外務省が実施した南南協力支援政策評価報告書
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/kunibetu/gai/nn/index.html

  2. UNDPの南南協力に関する情報サイト
    http://www.undp.or.jp/tcdc/framewrk.html

  3. "Supporting South-South Cooperation in the 21st Century-JICA/UNDP Joint Symposium, 4th, 5th October 2001", JICA and UNDP

  4. .「第2 回アフリカ開発会議(TICAD-II)東京行動計画-21世紀に向けたアフリカ開発」1998年10月

  5. Group of 77
    http://www.g77.org

  6. TICAD10周年宣言
    http://www.mofa.go.jp/region/africa/ticad3/declaration.html

1   途上国間技術協力(TCDC)は、必要に応じて国連や二国間ドナー等の外部からの助言と財政支援を受け、途上国が相互に経験と技術能力をシェアする途上国組織による開発活動及びプロジェクトの実行と運営を指す。
2   途上国間経済協力(ECDC)は、先進国の支援に頼ることなく開発途上国の間の協力により自らの開発を促進しようとするもの。幅広く、民間セクターや投資・貿易を含む概念。
3   1964年6月国連貿易開発会議(UNCTAD)で途上国の要求を団結してドナーコミュニティに出す目的で作られた途上国グループ。現在は135カ国である。http://www.g77.org
4   「第三国研修」とは、開発途上国でも比較的開発が進んだ段階にある国を拠点として、周辺国から研修員を受け入れ、研修を実施し、技術移転、普及する協力スキームである。
5   「第三国専門家派遣」は、南南協力支援の一環として、日本の技術協力を補完・支援、または日本が実施した技術協力の成果を普及・発展することを目的に開発途上国で他の途上国の優れた人材を専門家として活用する制度である。
6   ここでいう「三角協力プロジェクト」は、わが国が他の援助国・援助機関と共同で、途上国における協力事業のこと。わが国は、1992年、カンボジア和平協定後、同国コンポンスプー県及びタケオ県周辺を対象とし、農村基盤整備・農村地域開発による帰還難民等の生活向上を目的に、上記プロジェクトを実施している。
7   費用負担の割合は、無償資金協力対象国で15%、非無償対象国30%となっている。またタイトのパートナーシップ・プログラムが2003年に延長され、タイ側のコスト・シェアリングは50%になっている。同様にシンガポールについても50%負担している。

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