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UNICEFと開発
国際協力機構 青年海外協力隊(ボリビア派遣中)*
笠原龍二

1. 組織目的

 ユニセフの活動目的は、基本方針文書(Mission Statement)に掲げられている通り「子どもの権利の保障および子どもの基本的ニーズの充足、子どもが潜在的能力を十分に発揮するための機会の拡大を推進すること」である。この基本方針は創立50周年を迎える1996年に明文化されたもので、1989年の国連総会において採択された「児童の権利に関する条約(Convention on the Rights of the Child: CRC)1」の精神に則って活動をする旨が述べられている。更に、子どもの成長と強い関係がある女性の権利を定めた「女性差別撤廃条約(Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination Against Women: CEDAW)」の促進もユニセフの主要な活動目的となっている。

2. 歴史的背景

 ユニセフは、1946年「国連国際児童緊急基金(United Nations International Children's Emergency Fund)」として3年間の暫定的な機関として設立(国連総会決議57(I))され、戦後復興における暫定的且つ緊急の児童支援を主な活動にしていた。1950年の国連総会決議により活動を延長し、1953年にユニセフは「国連児童基金(United Nations' Children Fund)」(国連総会決議802(VIII))となり、開発途上国での長期的な子ども支援活動を展開することとなった2。その活動は、保健医療を中心に、栄養改善、飲料水供給、母子福祉、教育などを含む社会開発援助であった。更に、1989年に国連総会が「児童の権利に関する条約(CRC)」を採択すると、その活動は社会開発援助の実施に加え、子どもの権利の推進が行われるようになった。1990年には世界で初めての子どもに関わる問題を中心にとらえた世界会議「子どものための世界サミット(World Summit for Children: WSC)」が開催され、子どもの保健、栄養、教育に関する10年間の目標が採択され、ユニセフはWSCの目標の達成とモニタリングをすることとなった。そして、2002年には「国連子ども特別総会(United Nations Special Session on Children)」にてWSCの最終報告及び評価が行われ、「子どもにふさわしい世界(A World Fit for Children: WFFC)」が2010年までの活動計画として策定された。ユニセフは、さらなる目標達成に向けた努力の支援とモニタリングを行うこととなっている。

3. 資金

 UNICEFの活動資金は、政府及び民間からの任意拠出金から成り立っている。2003年の総収入は16億8,800万米ドルであり、政府からは11億3,600万米ドルで、民間からは5億1,500万米ドルであった。この任意拠出金は、ユニセフの活動の基礎となる通常予算(Regular Resources)と特定の目的のため使途を指定されたその他の予算(Other Resources)の二つに分けられ、2003年の総収入の内、通常予算が7億3,200万米ドルで、その他の予算は9億5,600万米ドルであった。なお、2003年の総支出は14億5,000万米ドルに及び、直接プログラム支出は83%を占める。活動支援(11%)及び管理費(6%)などは、合計17%程度に抑えられている。

4. 組織構成

 ユニセフは、ニューヨークに本部をもち、8つの地域事務所、126カ国の国別事務所で構成されている。その他に、東京、ブリュッセルに事務所があり、フィレンツェに研究機関、コペンハーゲンに物資集積センターを有する。ユニセフの政策決定は、国連総会及び国連経済社会理事会(経社理)の政策方針に則り、執行理事会(Executive Board)によって行われる。その主な役割は、事業を承認し、管理・財務案や予算を決定することである。執行理事会のメンバーは、経社理により選出された36カ国の代表からなり、任期は3年である。執行理事会は、年1回の年次会合と年2回の定例会合を開催しており、2年に一度は2カ年の活動支援予算(Biennial Support Budget)の承認のための会合が開かれている。

 ユニセフの活動は、現在157カ国で行われている。国別事務所の上部組織である地域事務所の役割は、国別事務所での業務執行の補助や技術的支援を行うこと、国事務所の実施状況をまとめ本部に情報提供することとなっている。この他、先進国37カ国にユニセフの国内委員会があり、子どもの権利の推進、ユニセフの広報・募金活動を担当している。日本では、財団法人日本ユニセフ協会がこの国内委員会にあたる。

5. 政策・事業内容

(1)政策
 ユニセフは、その活動目的を追求するため、権利重視のアプローチ(Rights-Based Approach)及び結果重視の運営管理(Results-Based Management)を採用している。

 ユニセフの権利重視のアプローチは、2001年に策定された中期計画『中期戦略計画(Medium-Term Strategic Plan: MTSP 2002-2005)』に反映されている。この中期計画(MTSP)は、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)の8つの目標のうち6つは子どもの権利に関することであることや、2002年の国連子ども特別総会の最終報告(SSC/WFFC)が子どもの権利の実現に向けた行動計画の採択であったことを受けて策定された。中期計画(MTSP)の活動優先事項はそれぞれMDGsやSSC/WFFC、そして子どもの権利(CRC)の実現に沿うように政策が立てられており、「女の子の教育(Girls' Education)」、「予防接種プラス (Immunization "Plus")」、「子どもの保護(Child Protection)」、「HIV/エイズ(HIV/AIDS)」、「乳幼児総合ケア(Early Childhood Development)」の5つが具体的な優先事項となっている。

 「女の子の教育」においては、教育へのアクセス、その質、教育環境の改善を通じて、活動目的を達成しようとしている。国際レベルにおいては、「国連女子教育イニシアティブ(United Nations Girls' Education Initiative: UNGEI)3」や「万人のための教育(Education for All: EFA)4」に参加しており、国レベルにおいては、セクター・プログラムや貧困削減戦略などを効果的に活用して活動している。「予防接種プラス」は従来から注力してきた活動であり、政府主導の関係機関間調整委員会(Inter-Agency Coordination Committee)の協力を得て、物資や技術の普及を図っている。また、ユニセフは国家が予防接種に関する多年度計画を作成することを推進しており、2003年度までに110カ国が策定するに到っている。「子どもの保護」に関して、ユニセフは各国に政策として取り上げるように働きかけている。その際に中期戦略計画(MTSP)は、子どもの保護とその他の優先課題に関する活動との間の調整を図り、セクター間の協調を実施するのに活用される。「HIV/エイズ」については、その緊急性に鑑み、対策の優先化を政府に働きかけている。またHIV/エイズによって生じた孤児への対処もその活動の一部となっている。「乳幼児総合ケア」に対しては、その必要性をユニセフは被援助国政府に訴えて、政府の一貫したプログラムの策定を推進している。ただし、そのプログラム策定のための指標が現在欠落しており、その指標作りはユニセフの活動課題の一つとなっている。

 一方、ユニセフはその活動の効率化を図り、結果重視の運営管理を実施する目的の下、2000年より多年度資金拠出枠組み(Multi-Year Funding Framework: MYFF)という組織運営体制を活用している。MYFFは、目標、優先項目、計画、資源、財源、そして結果を一括してとらえることにより、組織を効率的、効果的に管理運営することを目的としており、具体的には、4年間の中期計画(Medium-Term Plan)5、2年間の活動支援予算(Biennial Support Budget)、事務局長年次報告書(Executive Director's Annual Report)、公約行事(A pledging event)、及び協議(Consultations)から構成されている。なお、通常予算の効率的な地域配分は、1999年から導入されている通常予算分配システム(Regular Resources Allocation System)に拠っている。このシステムにより、通常予算の60%は後発開発途上国(Least Developing Countries: LDCs)に拠出することが決まっている。地域的には、サハラ以南アフリカ(Sub-Saharan Africa: SSA)が重点地域となっており、通常予算の50%を配分することになっている。

(2)活動実績
 2003 年の活動実績をその直接プログラム支出額(Direct Programme Expenditure)で見ると、一番支出が多いのはこれまでの実績を生かし「乳幼児総合ケア」の36%であり、次は「予防接種プラス」の22%である。「女の子の教育(19%)」、「子どもの保護(10%)」、「HIV/エイズ(9%)」がこれに続いている。なお、今後はHIV/エイズに対する活動への拠出増額が見込まれる。

  一方地域別でみると、最も直接プログラム支出額が多い地域は、サハラ以南アフリカ(SSA)41%、次いでアジア地域32%、中近東・北アフリカ地域(13%)、米州・カリブ地域6%、東欧・CIS・バルト諸国4%、となっている。

6. 日本

(1)日本の貢献との関係
 2003年の政府・民間を合わせた日本の拠出は2億1,929万米ドルで、米国の3億2,300万米ドルに次いで第2位の拠出国である。拠出の内訳は、政府が1億100万米ドル(政府拠出において第5位)であり、民間が1億1,830万米ドル(民間拠出において第1位)である。

 日本政府は、子どもに対する活動が途上国の長期的な社会開発の促進のために重要であることを鑑みて、基礎的開発分野及び人道分野における子どもの支援を実施してきている。ユニセフの活動優先事項の一つである女の子の教育と保護においては、ユニセフのその他の予算に対して、1995年より毎年100万米ドル(2002年以降は90万米ドル)の拠出を行っている。また、アフガニスタン復興の際に行われた、"Back-to-School Campaign"(総予算1,900万米ドル)に対しても、日本政府が500万米ドル、日本ユニセフ協会が700万米ドルで合計1,200万米ドルを拠出するなど、積極的な活動を実施している。

(2)我が国のユニセフとの連携
 日本政府は近年保健医療、教育、水といった分野で日・ユニセフ間協力を強化してきている。保健医療分野では、WHOが掲げた「2005年までの世界からのポリオ撲滅」宣言に呼応して1993年から2001年までの9年間にユニセフを経由した無償資金協力等により約6億人の子供たちへのポリオ・ワクチン投与を実現し、目標達成に向け大きな貢献を行った。

 また教育分野においても、ユニセフがアフガニスタンで実施している基礎教育支援(Back to School Campaign)や、バングラデシュにおけるユニセフ主体の事業「地域別教育環境集中改善計画(IDEALプロジェクト)」において連携協力が行われている。

7. 課題

 たとえば、活動優先事項の一つである「女の子の教育」は、MDGsの1つでもある。全MDGsは2015年までに目標を達成することが必要となっているが、「女の子の教育」に関しては「2005年までに初等・中等教育でのジェンダー格差の解消を達成すること」となっている。これに対しユニセフでは、目標達成が困難と見られる25カ国に対して集中的な支援をしていく旨を決定、実施している。2005年を迎えるにあたり、この教育におけるジェンダー格差に対する活動の中間評価がおこなわれることとなる。現在、この目標を達成することは困難であることが明確になっており、その評価に置いては、達成することができなかった要因が明らかになること、そしてその要因を克復できるような活動が策定・実施されることが期待されている。その中で、活動の優先事項に「女の子の教育」を掲げているユニセフの役割はより重大性を増すものと考えられる。

8. 重要文献

・ユニセフが定期的に刊行している文献
  1. UNICEF Annual Report. New York: UNICEF
    (邦訳:ユニセフ『ユニセフ年次報告書』日本ユニセフ協会)

  2. The State of the World's Children. New York: UNICEF
    (邦訳:ユニセフ『世界子供白書』日本ユニセフ協会)
・ユニセフが事業展開する諸分野の統計資料
  1. ChildInfo: ユニセフ活動国の女性と子どもの状況、及び主要な開発目標への進捗状況をデータベース化した情報システム。女性と子ども以外の指標も加え、DevInfoという国連諸機関の統合データベースにする試みも始まっている。
    http://www.childinfo.org

  2. ChildInfo(DevInfo)の一部に統合されている複数指標クラスター調査(Multiple Indicator Cluster Surveys : MICS)は、「子どものための世界サミット(WSC)」の活動進捗状況を測るために実施された調査で、世界66カ国における、栄養、保健、教育、出生登録、家庭環境、児童労働、HIV/エイズに関するデータを入手することができる。
    http://www.childinfo.org/MICS2/Gj99306k.htm

9. 関連リンク

  1. UNICEF
    ユニセフの目的、政策、具体的活動に関わるレポートなどを紹介している。
    http://www.unicef.org/


  2. Innocenti Research Centre (UNICEF)
    ユニセフの研究機関で、児童の権利を推進することを目的し、その研究論文を発表している。
    http://www.unicef-icdc.org/


  3. 日本ユニセフ協会
    日本にあるユニセフの国内委員会。ユニセフの活動や、世界の子どもたちの情報を入手できる。
    http://www.unicef.or.jp


  4. e-FASID児童支援に関するウェブリンク集
    世界の児童支援について、児童の権利、児童労働、児童と紛争についてまとめたリンク集。
    http://www.efasid.org/J/weblink/children/children.htm


* 元FASIDジュニア・プログラム・オフィサー
1 外務省翻訳によるとConvention on the Rights of the Child: CRC =「児童の権利に関する条約」となる。
2 この際に機関の通称は、親しみのある「UNICEF:ユニセフ」が残ることとなった。
3 UNGEIは、EFAの目的のうち、女の子の教育(質、アクセス、公平性など)に焦点を充てた2000年から10年間の活動計画のことである。Web: "A New Global Partnership meets an Old Global Challenge"
4 「万人のための教育(EFA)」は、開発における基礎教育の重要性を鑑み、1990年のタイ、ジョムティエンで開催された「万人のための教育国際会議」でまとめられた、基礎教育に関する国際的な目標である。10年間の活動後、2000年のセネガル、ダカールで開催された「世界教育フォーラム」で前回の目標が再検討され、新たに目標と戦略「ダカール行動枠組」が策定された。Web: "Education for All"
5 現在の中期政策(MTP)は2001年に策定された中期計画『中期戦略計画(Medium-Term Strategic Plan: MTSP 2002-2005)』がそれにあたる。

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